【★★★★★】
感想をうまく伝えられない自分の文才の無さ、言葉を知らな過ぎる事がこれほど悔しいと思う事は無い!というくらい面白かった。軍モノの小説は今までに読んだ事が無いし、登場する肩書きやシステムの名前がイマイチ覚えられないのでラストまで読めるかちょっと不安にだったけれど、読み進めていくうちに通勤のとき電車を降りるギリギリまで読むくらい本を閉じる事の方が辛かった。
登場人物は様々な背景を抱えて、家族を愛し仕事をこなすというどこにでもいる父親、夫、息子として描かれていてたので、そんな人達が不器用に必至に戦って命を落としたり傷付く姿や言葉にハッとさせられた。戦争は政治家と自衛隊の世界だけの話だと思ってきた事、それらを「よく分からない」と、考えようとも知ろうともしてこなかったこと、戦争を放棄しているんだから平和は与えられるもの、当たり前のモノだと思っていたこと…自分の国のことなのに何一つ知らないこと…。特に仙石の
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『戦争の痛みを実感できる奴なんて一人もいない。
反対って唱えてりゃ、自分達は安全だって思い込んでる。
自分たちとは永遠に無縁な事柄だって、なんの根拠もなく信じてるんだ。
そんなのは本当の平和じゃねえ。嫌なものを見ないようにしてるだけだ。
そうじゃなくって、そういう辛い現実があるってことを認めて、
ちゃんと備えて、その上で考えていかなきゃ…。
生き残るためには戦う、でも一瞬でもいい、
自分たちは撃つ前にためらうんだって覚悟で、
みんなが自分の身を引き締めていければ…
その時、日本は本当の平和国家になれるのかもしれない。
—戦争が上手にやれたってひとつもいいことはねえんだから…』
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という言葉が一番響いた。今この時期に読めたのも良かったと思う。
ストーリー的にも終盤「そうきたか!!」というドンデン返しや、上巻からの伏せんの答えも、登場人物一人一人に結末が用意されていたのも良かった。映画化されるというのをきっかけに読み始めたからなのか、全てに自分なりの映像が浮かんできて、ラストキーワードになるあるものの色、質感まで感じられるくらい楽しめた。しばらくこの興奮はおさまりそうもないかも…!