1.『しゃばけ』 2.『ぬしさまへ』 3.『ねこのばば』 4.『おまけのこ』 5.『うそうそ』 /畠中 恵
江戸の京橋にある大店『長崎屋』の若旦那、一太郎は体が弱く寝込んでばかり。両親、二人の手代に溺愛されてはいるけれど、心優しいおぼっちゃまでみんなから愛されている。ただ、その手代や、寝込む一太郎を囲むのは人間ではなく、妖怪。滅多にない体の調子が良い日、外に出ると必ず事件に巻き込まれ、妖怪達に助けられながら事件を解決していく…といった感じのファンタジー推理小説(?)。
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時代小説を読みたいけど、自分の中でブームも落ち着き始めてしまって、誰かが薦めてくれたら読むけど、自分から探すのもちょっとめんどくさいな〜なんて思いながら本屋をぐるぐる歩き回っていた時に見つけた『しゃばけ』。
一太郎の出生の秘密や手代の佐助と仁吉の正体など、徐々に明かされる秘密があったり、犯人をはじめ、一太郎を囲む登場人物全てに愛嬌があるので、ぐんぐん小説の中に取り込まれて、気づけばシリーズ5弾までいっきに読んでしまった。畠中恵さんは元は漫画家としてデビューしているらしく、そのためか読めば読むほど、映像が見えてくる。この小説こそNHKあたりでドラマ化してくれないかなぁ…と思ってしまうくらい。CGフル活用で鳴家が見たいなぁ。鳴家の1匹は「アラレちゃん」に出てくるニコチャン大王でお願いしたい!
ちょうど今、
杉浦日向子さんの『うつくしく、やさしく、おろかなり—私の惚れた「江戸」』を読んでいて、その中に『お江戸の妖怪めぐり』という項目があるんだけれど、『しゃばけ』の世界にリンクされる内容で、こちらもとっても面白い。
江戸時代の妖怪には
「村型」と
「都市型」の2種類あって、「村型」は人間と妖怪とでテリトリーを分けていて、妖怪のテリトリーに人間が入ってしまった時に祟ったり、いたずらをする。一方「都市型」の妖怪は人間と渾然一体。江戸は元々は妖怪の住処を切り開いた場所だったそうで、後から住み始めた人間に自分達の土地だと自己主張する為、日常の中に超常現象が起こる。人間の姿をした妖怪がいる可能性もあるとか。ということは、『しゃばけ』シリーズはまさに都市型の妖怪達。
更に面白いのは、江戸で一番妖怪が出没したのは
街と村の境界。(それは何故か…というのは本に詳しく書いてあるので、ここでは割愛。)街と村の境界地域から更に街の中心部に近づくと、境界に出没する様な大きな妖怪は神として奉られ、祠に収められてしまった様で、東京にお稲荷さんが多いのはその為らしい。この街の中心部というのは
神田・日本橋。『しゃばけ』シリーズで舞台になるのも日本橋や京橋。これって凄くない!?(時代考証とかしてれば当たり前なのかな?)
そういえば、『しゃばけ』シリーズの妖怪達の中に「神」がいて、様々なもの(小説の中に出てきたのは硯だったかな…?かなり記憶が曖昧)が何百年と行き続けると「付喪神」となるなんて言われてたっけ。確かには長く使ったものには命が宿ってるから捨てる時は感謝の気持ちを込めて、塩で清めてから捨てる風習もあるし、神社で「お炊き上げ」があるくらいだし。今までは政治的(?)な観点からの日本史ばかりに目を向けていたけれど、庶民の歴史は知らないことばかり。また私の中で歴史ブームに小さな火が付き始めました!